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2013.06.14 演劇評論「川崎郷土・市民劇『大いなる家族』観劇記」 投稿者:昼寝ネコ

Julia Zenko Chiquilín de Bachín

川崎郷土・市民劇『大いなる家族』観劇記

昼寝ネコ

川崎郷土・市民劇「大いなる家族」の初日公演を観劇した。

ホールの入り口で手渡されたプログラムには
一切目を通さず、先入観のない状態で席に着いた。

登場人物は決して少なくはなく、
異なる色彩の何本もの糸が、悲喜こもごもに絡み合い
時代に翻弄されながら、再出発という名の
到着点に至るストーリーだ。

緊迫感溢れる空襲のシーンから始まるが、
音響と照明が終始、舞台の雰囲気を支えていた。
舞台は二重構造になっており、上層では
この作品の軸ともいうべき「沖縄舞踊」の
様々なシーンが演じられる。

登場人物は、それぞれに過去を背負い、
同時に未来を失いながら、葛藤と向き合う。
演じている、という領域を超えて、それぞれが
登場人物を忠実に再現しているという印象だった。
演出家の冴えを感じる。

いつもながら、小川信夫作品に特有の、社会的視点、
弱者へのいたわりの視線を感じ、共感を覚えた。
さらに、ともすれば争点になりがちな歴史や
社会構造に対する見解、そして人間の生き方にも
多様性があることを明示しており、救いだった。
重い悔悟と葛藤を抱える登場人物の台詞で示唆した、
現代人の生き方に対するメッセージは、
まさに規格化され、主体性を喪失したかのような
一般市民に対する、ある種の警鐘とも受け取れた。

観劇中、意識下にイメージが浮かんだ。
社会構造は、本来は単純なものだと思うのだが、
単純化しようとする過程の水面下で、事態が複雑化されている。
また、人間は誰しもがいくつもの選択肢と葛藤を抱え、
錯綜した一定期間を過ごすものの、最終的には
単純化されたライフスタイルを希求するようになる。

終戦直後と違い、現代社会に生きる人は、物質的には
ほぼ満たされており、極端な飢餓や生命の危機に
直面する人は少ないと思う。
その半面、マスメディアの垂れ流す情報に対し
疑念を抱く人の絶対数が増え、国際情勢にも
不安感が増大している。
なかなか困難なことだとは思うが、台詞に込められた
「人間個人として主体的に生きるべきだ」
というメッセージを、改めて反芻している。
人によって、この作品から受け取るメッセージは異なると思う。
私には、人生そして社会との関わりについて
考えさせられる作品だった。

休憩時間に、隣の席で観劇していた娘から注意を受けた。
「どうして静かに観劇できないの?」
気付かなかったが、どうやら時々咳払いをしたらしい。
「年齢相応に身体もあちこち老化してるからね」
「ずいぶん歳をとったんだね」
・・・当たり前だろう?自分の歳を考えてみなよ、
と言いたがったが、苦笑してそれで会話は終わった。


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