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130822昼寝ネコ

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2013.08.22 エッセイ「まだまだ終わらない気仙の夏」 投稿者:昼寝ネコ

Astor Piazzolla: Milonga del Angel

 
 
まだまだ終わらない気仙の夏
 
 
昼寝ネコ
 
 
 

今朝、電話に出ると女性の声だった。
少しためらいがちな感じだったので、
よくある話しなのだが、「絵本の申込期限を
過ぎてしまっているけど、まだ大丈夫でしょうか?」
という問合せかと思った。
「大船渡のママシップなんですが・・・」
意味が理解できず、思わず聞き返してしまった。

説明を聞くうちに、少しずつ状況が把握できた。

2年前の3.11大震災で、子ども関係の施設が
壊滅状態になり、助産師さんである彼女が中心になって
子育てを支援する活動を始めているらしい。
いわゆる、母と子の絆を大事に育てよう、という主旨だ。
正式名称は「こそだてシップ」で、その代表助産師だという。

数日前、地元大船渡の東海新報社が
「気仙の赤ちゃんへの名入れ絵本を寄贈」という
無料の絵本寄贈プロジェクトを大きく記事にしてくれた。
私が名誉編集長を務める出版社・クロスロードが
福祉団体の助成を受けて進めているプロジェクトだ。

その記事には、申し込みチラシの設置場所として、
大船渡市役所、陸前高田市役所、住田町役場それぞれの
関連施設と東海新報社の4ヶ所が記載されている。
彼女が中心になって運営されている「こそだてシップ」には
たくさんのお母さん達が来ており、また2〜3歳のクラスも
併設しているということだった。

「気仙の赤ちゃん」の対象は、今年の1月1日から
年末12月31日の間に、気仙で産まれた赤ちゃん、それと
気仙在住の皆さんのお孫さんが、他県で生まれた
というケースも含まれている。
お兄ちゃんやお姉ちゃんには、「被災者の方への寄贈絵本」
のアイテムに「子育て応援版」とうのがあり、そちらから
名前を入れた絵本をプレゼントできる。

市役所や新聞社に置いている申し込みチラシを
「こそだてシップ」に通って来ているお母さん達のために
置かせてもらえないだろうか、というのが電話の主旨だった。
なので、ためらいがちな感じの声に聞こえたのだろう。
「気仙の赤ちゃんへの寄贈絵本」用のチラシ200部と
「被災者の方への寄贈絵本」用のチラシ100部を
発送した。明日の夕方には届くはずだ。

すでに絵本の申し込みが始まっている。
あるおばあちゃんは、申し込み書の通信欄に、
「津波は全てを奪い去って、何も残っていません。
でも、娘に孫が生まれたので、宝のようなものです。
大切な思い出として、孫や娘夫婦の名前が入いる
絵本を申し込みます。」
と書かれていた。

思い返せば去年の5月。
北海道・札幌を起点に、福島県・いわき市まで、
15社の新聞社を駆け足で回り、記事掲載のお願いをした。
15社のうち、11社が記事にしてくれた。
しかし、縁とは不思議なもので、
大船渡の東海新報社には、その後もこうして新規の
プロジェクトにも、協力をいただいている。
明日の新聞に、記事ではなく広告の形で
「気仙の赤ちゃんへの名入れ絵本を寄贈」プロジェクトを
掲載するので校正してほしい、とファックスが届いた。
手に取った瞬間、わが目を疑った。
メモを見ると「全3段・1面」と書いてあり
なるほど、どでかい広告に仕上がっている。
つまり、第1面の下部に、3段幅でしかも
左右目一杯の大きさの広告という意味だ。

年間広告費は払っているが、大した金額ではない。
「連続広告の第1回目だから、大きくします」
と、電話口で説明してくれた常務の言葉を思い出す。
大きく、とは聞いていたが、まさかこんなに大きいとは
夢にも思っていなかった。

大船渡銘菓「かもめの玉子」が好物だし、
書きかけの舞台作品「気仙しぐれ雪」の舞台が気仙だし、
その主役の女の子の指す独創的な将棋が「気仙流」だし、
まあ、そう考えてみれば、私自身もずいぶん
気仙地域に肩入れしているのは客観的な事実だ。
でも、煎じ詰めれば、気仙の人たちの人間性に
大きな魅力を感じているというのが、一番の理由だと思う。

3.11の爪跡は深く、癒えるまでには年月がかかると思う。
寡黙にじっと耐え、周りの人たちの痛みを知って
自分自身の傷を隠して身を粉にし・・・言葉には出さないが
そんな心情が痛いほどよく理解できる。
気仙の夏は、まだまだ終わっていないことを実感する。
 

画像の説明

  • 新しい命の誕生を喜び祝うのに最適な贈り物です。
    ご両親の愛と願いに溢れた命名はお子さんを生涯にわたってその名で特定します。遥かなる未来に行っても尚、絵本を開くたびに贈り主の愛と優しさをなつかしく思い起こすことでしょう。 -- パシリーヌ 2013-08-22 (木) 21:51:43
  • ママの言葉、すぐ聞いて、正しい子供になりましょう。
    パパの言葉、すぐ聞いて、喜ばれる子供になりましょう。
    神の言葉、良く聞いて、みんなの光になりましょう。
    ♯「よく聞いて」より 1974年 母

    わんぱくだった少年時代。
    聖餐会で大活躍してくれた我が家の
    「自家製手作り Quiet Book(布製の絵本)」。

    それは、大人になった現在でも私の人生の大切な宝物です。
    絵本がもつ力は偉大で永続的です。

    小野氏の社会貢献活動を陰ながらいつも応援しています。
    -- ペパーミント 2013-08-23 (金) 08:12:25
  • パシリーヌさんへ

    有難うございます。
    赤ちゃんの時に、この絵本をプレゼントされた子が
    やがて大きくなって、本棚から取り出し
    「わたしの絵本を読んで」と、毎日のように
    お母さんにせがむ、というお話しをよく聞きます。
    そんなエピソードは、スタッフみんなの
    達成感になっています。
    -- 昼寝ネコ 2013-08-23 (金) 16:19:33
  • ペパーミントさんへ

    「自家製手作り Quiet Book(布製の絵本)」。
    とても良く整えられた環境の、ご家庭にお生まれになりましたね。
    確かに、純粋に自分のために愛情を注いでくれた、という印象は
    何歳になっても心の深くに生き続けると思います。

    社会貢献活動と評価していただくのは有難いことです。
    どうせ商品を作るなら、手に取った人が感動し、癒され、
    心に平安を感じてほしい、そう考えているだけで
    決して社会活動などではなく、単なる仕事だと考えている、
    そう思います。でも、結果的に、たとえ一人でも
    喜んでいただければ嬉しく思います。

    -- 昼寝ネコ 2013-08-23 (金) 16:29:50

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