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2013.08.23 エッセイ「新宿駅」 投稿者:コニー
 
 
新宿駅
 
 
コニー
 
 
 

 携帯電話にSuicaをチャージしいつものように中央線へ乗車。たまたま目の前に座っていた人が下車し運よく座れた。鞄を網棚に乗せ新宿まで座っていられた。新宿に到着しホームの階段を降りながら鞄から携帯を取り出そうとした。しかし携帯が入っていない!?鞄の中を何度確認しても見つからない・・。携帯を誰かに取られたなら今持っている財布の中身、全部と携帯を喜んで交換してもいいと思うほど焦った。どこで無くしたのか記憶を辿る。そして結論は網棚に乗せた時、鞄の口から落ちたんだ。そして携帯は今も電車の中で四谷に向かっている!。急いでホームに戻り駅員に事情を説明。しかし駅員は携帯だけ網棚に残すバカが居るのかと軽蔑した目で私を見る。追加して鞄から落ちたと思う、という事情を説明して少し納得してくれた。そもそも私はJR職員の態度の悪さに時々腹が立つ事がある。さらに私が昼食によく行く職場近くの蕎麦屋にJR職員が、いつも団体で押し寄せる。彼らがいなければ3分位で出てくる「ざるそば」が15分経っても出てこない。携帯を網棚に忘れたという窮地をJR駅員にゆだねる事になるとは・・。

 ホームの駅員は事務所に行って相談するように言い、私に背を向けお決まりのアナウンスを始めた。私はその瞬間「あー、たらい回しの始まりか・・」と半分想定していた展開にがっくり。言われた通りホームの事務所をノックし薄暗いカウンターの向こうにいる駅員にできるだけ、シタテに愛想よく説明した。以外な事にその職員は私が降りたドアの位置から携帯は6号車の網棚だろうと教えてくれた。さらに進行方向どちら側の網棚だったのかなど手際よく詳細を聞いてきた。そして降りた時間から終点の東京駅に到着する時間を調べ手際よく東京駅駅ホームへ連絡してくれた。色々説明した後職員は「はい、了解しました。」と言って電話をきると「お客様の乗車された快速は13分後に東京駅に到着します。6号車の網棚を確認するように伝えたのですが丁度その時、車椅子のお客様の介助で確認できないそうです。」とさも携帯電話の件はこれで決着というような顔でそう言い放った。

 私は車椅子の人なんかいいから・・とは言うつもりはないが、でもその介助の後にちょっと見てくれても良いじゃないかと、ノドまで出かかった。それに東京~新宿間には神田、御茶ノ水、四谷と駅はいくつかあるんだからその時その6号車の網棚を確認してくれも良いのにと言いたかった。私の頭は、茶髪のお兄ちゃんがシメシメとばかりに私の携帯を見つけてそれで電車を降り、さらにコンビニで買い物しまくり、わたしの携帯で電話をかけまくる姿が頭を廻った。

 以前都知事が東京オリンピック招致のプレゼンで「もし皆さんが東京で財布を失くしても手元に戻ってくるでしょう東京とは、そういう街です」というような内容を日本人にか解らない英語でアピールしていたのが頭をよぎった。東京はそんなおめでたい街ではない。だって目の前の駅員でさえ乗客の携帯を親身に探そうとはしてくれないんだから。そして駅員は私の事をお察しします、というような「困り顔の笑み」で「夕方以降こちらの忘れ物センターにお電話してみてください」と言って小さい紙を手渡してくれた。つづけて「ちなみにお客様の乗車された電車は42分後に12番ホームに戻ってきます。6号車位置で待って確認してみてくだい」と言った。

 「それって・・・。」と思ったがグッとおさえて、御親切にありがとうざいますと言わんばかりの笑顔を返して「行ってみます!」と言い12番ホームへ向かった。目当ての電車が来るまでの約40分間10本近くの電車が12番ホームに到着した。その都度私は網棚を確認するリハーサルを行った。電車の扉が開いている数十秒の間に人の間を抜けて、そこと思われる位置へ急いで向かい軽く飛跳ねて携帯がないか網棚を確認しドアが閉まる前にまた下車する。周りの人には「あまり見ては失礼な変な人」と思われていたに違いない。お盆時期の炎天下のホーム暑さによる汗と焦りによる変な汗が混る状態でその時を待った。

 しかし携帯はとっくに誰かの手に渡っていてる可能性の方が高いに決まっている。新宿で忘れた携帯が東京に行って新宿まで無事に戻ってくるなんて事がある訳がない。こんな事しても空しいだけだ。そう思って電車を待った。

 そして目当ての電車が12番ホームに滑り込んできた。がっかりしないように心の準備だけはしておいた。ドアが開き大勢の人が電車から降りた。私が乗ろうとした時既に出発のメロディーが流れ出した。そしてそこと思われる網棚を見た・・。網棚の上に見慣れた携帯が私を待っていた・・。私は携帯に手を伸ばし掴んだ。ドア閉まるギリギリでホームに降りた。調べてくれた駅員の所に走って向かい、携帯を見せて「ありました!」と伝えた駅員は満面の笑みで「良かったですね、気をつけてお帰りください」と言ってくれてた。私は心の中で「これから仕事なんだけど・・。」と思いつつ「ありがとうございました」と言った。

 本当は限りの事をしてくれていたJR職員に感謝。そして新宿地下に貼ってある東京オリンピック招致ポスターに頭をさげ「猪瀬都知事東京オリンピック私も応援しています」とつぶやきながら改札をピッと通過した。私は予定時間に遅れながらも仕事へ急いだ。
 
 
 
 

  • 結果的には大変良かったですね。
    ドキュメンタリータッチで、結末をハラハラしながら
    読んでいましたので、安堵しました。
    まるで津軽鉄道や三陸鉄道でのできごとのように思えます。
    東京ダウタウンの、しかも新宿〜東京間という
    最も乗降客が過密なエリアですから、ちょっと考えられません。
    でも、意地悪な評論家は、都会ではそれだけ、
    自分以外のことには無関心なのだと、論評しそうですね。
    そんなことまで調べられませんので、ともかく結果を喜びましょう。

    でもね、真実は意外な所に隠されているものなんですよ。
    その携帯電話は、「隠遁の術」を自ら使い、
    人目に触れぬよう姿を隠し、飼い主、ではなかった
    持ち主の所に帰りたいという一心で、本体を透明化し、身を隠していた、
    これが真実なのではないでしょうか。 -- 昼寝ネコ 2013-08-23 (金) 14:44:50
  • 昼ネコさんコメントありがとうございます。長文を読んで頂き感謝です。自分の文章を読み直すと、いかに自分が悲観的な人間なのかよくわかりました(T_T)。 -- コニー 2013-08-23 (金) 16:04:42
  • まず、昼寝ネコ先生のこのような興奮気味な饒舌コメントを引き出した見事な文章であることを、それをもっておめでとうと申し上げます。日ごろは殆ど励まし文体です。確かにサスペンス並みのハラハラが最後まで続きました。終わりよければ全てよし。それにしても思いと行動は普通の人の場合一致している筈ですが、コニーさんはものの見事に真逆ではありませんか。あるわけないあるわけない、と思いながらある筈だある筈だ、の探しっぷりの行動です。焦った時の人の心理状態はそういうことなのでしょうか?作家の猪瀬都知事に読ませたいショートストーリーで既に文章が映像化されていますが、役者であるコニーさんご自信が演じるのを見てみたいです。 -- パシリーヌ 2013-08-23 (金) 16:52:48
  • 小説を読んでいるような感覚になりました。
    ハラハラしたり、イライラしたり、ホッとしたり。
    時間が止まりました。ありがとう。 -- わたる 2014-09-26 (金) 23:36:47

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