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2013.11.19 エッセイ「稽古場の思い出」 投稿者:コニー
 
稽古場の思い出
 
 
コニー
 
 今から25年前16歳の時,時代劇舞台のオーディションを受けた。幸い私は合格し1ヵ月の舞台出演が決まった。初顔合わせの日、主役は有名演歌歌手とあって付き人やマネージャーが取り巻いていた。しかし本人の姿はどこにも見えない。プロデューサーが「座長の島倉千代子さんです!」と役者スタッフに紹介した。質素なTシャツにジーパン姿で髪はショートでスッピンの小柄なおばさんがスッと立ち上がり浅く頭を下げた。テレビで観る和服姿にか細い話し方の演歌の大御所にはとても見えなかった。

 そしてあれよあれよという間に恐ろしいほど短い期間の稽古が始まった。

 ある日私の浴衣姿を見るに見かねた島倉さんはススッと私の所に来ると「誰だこんな着せ方させたのは!」と怒り気味に私の帯を締め直した。周りの役者や付き人があわてて駆け寄り「申し訳ありません」と島倉さんに謝り替ろうとした。しかし彼女は稽古場の隅に私を連れて行き、周りを意に反さず刀の持ち方、構え方を構わず私に伝授してくれた。力強い母親のような人だった。

 彼女の死をニュースで知った。私生活の波乱万丈を赤裸々に報道する島倉千代子と私の知る彼女は大きく違っていた。亡くなる直前に録音したと言われている歌声を聴き、あの日稽古場で厳しく指導して下さった彼女の背筋に響く力強い声が思い出された。
 
 

  • 子どもの頃、テレビで観る島倉千代子さんに、そこはかとなく立ちのぼる魅力を感じていました。江利チエミさん、雪村いづみさんとは別次元の世界を感じたのを、懐かしく思い出しました。 -- 昼寝ネコ 2013-11-19 (火) 22:56:30
  • あなたにとっては懐かしい役者時代のエピソードですね。大切な思い出としていつまでも
    心に秘めた宝物となることでしょう。しかし、世の中には悪い人たちがいるものです。信頼していた人に実印を預けたばかりに島倉さんは20億円の負債を抱えてしまったそうです。しかし、それをほとんど返済されたという歌の力にも仰天しました。そんな重圧の中で歌う美しい歌声は世の人々を慰め励ましました。「東京だよ、おっかさん」が好きです。あの澄んだ歌声よ天国でも永遠に! -- パシリーヌ 2013-11-20 (水) 06:24:53

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