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14020403加納 敏江

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2014.02.04 エッセイ「エピソード」 投稿者:加納 敏江
 
 
「エピソード」
 
 
 
加納 敏江

 加藤登紀子の「百万本のバラ」という歌がある。団塊世代の私達だけでなく、知っている人も多いだろう。私は趣味「カラオケ」しかなかった時、好きでよく歌っていた。特に「百万本のバラの花をあなたにあなたにあなたにあげる・・・」というところが好きだ。加藤登紀子もご主人を肝臓ガンで早くに亡くしている。この曲を歌う時はご主人のことを思って歌っているのだろうと勝手に想像している。
 昨年の10月に夫も肝臓ガンでこの世を去った。私達はお互い晩婚なので早い別れとなってしまった。12月が私の誕生日、そして同じ日が結婚記念日でもある。私が寂しいだろうと東京にいる娘が来てくれた。夫が亡くなって、2ヶ月ほどでお祝いというのもどうかと思っていたが、子供達がお父さんもきっと喜んでくれるからとお祝いしてくれた。寂しくて悲しみの底にいたので嬉しかった。
 夕方、花が届いた。箱を開けてみると赤いバラの花束だった。メッセージが添えられていて、夫からのプレゼントだった。夫のやりそうなことだけれど、ただただ驚くばかり。私が65歳なので「65本じゃないかな?」と言って花束を抱えたら、娘が百本位ありそうだと言う。
「え!まさか百本はないでしょ」「でも10本の束がざっと数えても10個位はあるよ」と娘。写真を撮るうちに、抱えた花束がだんだん重くなってきた。「本当に百本あるんだ!」思いがけないプレゼントだ。もうこの世にいない夫から、百本の赤いバラの花束が贈られたのだから。夫の優しさをこの百本のバラの重さに重ねた。嬉しさと驚きと寂しさと複雑な思いが交錯する。涙が止まらない。
 私(夫)の大好きなバラの花を贈りますと書いてあった。百本のバラは「100%の愛」という意味だと娘が調べて教えてくれた。後になって、娘が入院中にお父さんに頼まれたという。お母さんに感謝の気持ちで花を贈りたいと。
 良い時も悪い時も共に歩んだ30年。夫と過ごした日々はかけがいのないものだった。「百万本のバラ」を歌いながら涙がまた止まらない。

 何もかも忘れて冬の薔薇愛す
  
  娘がこの句を聞いて、バラのアイスかと思ったと言って笑った。
  夫と一緒に一度だけバラのアイスクリームを食べたことがある。
  夫はとても喜んで嬉しそうに食べていた。この句とは関係もない  
  のだが、私もつい笑ってしまった。

 散りゆくも残るも銀杏黄葉(いちょうもみじ)かな

  はらはらとイチョウの葉が散っていた。でもまだ残っている葉も
  多くある。逝く者も残された者もそれぞれの人生なのだと感慨に
  ふけったのでした。
 
 ふれるものみないとほしや寒の明け

  寒が明けると立春となる。自然にふれると春が待ちどおしく思え
  る。そして夫の残されたものすべてが愛おしく思えるのだ。

これらの句は、先生からダメ出しをもらったものばかりなのだが、私にはそれなりの思いがあり、捨てられないでいる。
 
 
 

  • 過去から届いた薔薇の花束。いつまでも純愛に包まれたお二人の人生が、目に浮かびます。 -- 昼寝ネコ {2014-02-05 (水) 00:32:20};
  • 「バラに託した愛の遺言」涙で文字が曇り、コメントしようにも言葉がうすっぺらになってしまい、続きません…。
    バラのアイス、は若さの屈託なさにウフッとなりました…。 -- 岸野みさを 2014-02-05 (水) 06:50:59
  • 加納敏江様
    「お正月一句創るに四苦八苦」の私です。ようやくコメントの句ができました。でもやっぱりぴったりしません。
    「いまはにもバラを贈りて逝きし夫(つま)」
    「死別(別れ)ても結びし心バラの束」 -- 岸野みさを 2014-02-08 (土) 20:38:33
  • 一昨年、教会員ではなかった叔父が癌で亡くなりました。
    昨年、その叔父の神殿の儀式が完了しました。

    今はパラダイスから遣わされた宣教師によって、
    叔父が福音を受け入れてくれることを常に願っています。

    地上で天父の戒めに忠実であり、
    家族と隣人に常に優しく接してこられた加納兄弟が、
    叔父のもとを訪れてくれていたら嬉しいです。

    又、ステキな句を分かち合って下さい。
    -- ペパーミント 2014-02-09 (日) 19:49:18
  • 昼寝ネコさま
    コメントありがとうございました。添付された加藤登紀子の百万本のバラを何度も聞いて、癒されています。

    岸野みさをさま
    加納兄弟との幸せな思い出は、八王子に沢山沢山あります。牛久では苦難続きでしたが、百本のバラをもらえた私は幸せ者です。コメントに俳句をありがとうございました。

    ペパーミントさま
    読んでくださってありがとうございました。とても励まされます。叔父様のところに行くように言っておきますね。 -- 加納敏江 2014-02-09 (日) 23:18:34
  • 加納敏江様
    20歳の頃、西八王子にある、今はダイエー昔は忠実屋に50代の母と買い物に行ったとき、加納兄弟に会いました。声をかけようとしたとたん、「やめなさい」と、隣にいた母に言われてショックでした。若い娘が盲目の男性に声をかけてはいけなかったのです。
    この世を去った後まで100本のバラをお誕生日に届けるなんて、如何にも加納兄弟らしいですね。思い出せば加納兄弟との会話は楽しかったです。チョコット笑いが入ったり、ウイットに富んでいるのです。目が見えないということを感じさせないのです。服装もオシャレだし(うるさい私は文化服装学院出身)死ぬというのに、やることがオシャレ!まあ!やっぱりこのキザ男! -- 丸山恵子 2014-02-14 (金) 17:53:49
  • 加納敏江姉妹
    どの句も加納兄弟への深い思いが伝わってきます。特に「散りゆくも残るも銀杏黄葉かな」いいですね。自分の生きる道を見据えた姉妹の気持ちが伝わってきます。どうぞ、人生の機微を沢山の句に寄せて下さい。
    「拝啓と 伺い見たし 霊の園 親しき笑みの 語らいの輪」塚田淑子 -- 塚田淑子 2014-02-15 (土) 10:49:51
  • 丸山恵子さま
    本当に加納兄弟らしいでしょう!加納兄弟をよく知ってくれているのはやっぱり八王子の人達ですね。嬉しいです。
    姉妹のコメントで気持ちが明るくなりました。ありがとうございました。
    塚田淑子さま
    皆様のおかげで少しずつ立ち直っています。励ましのお言葉と短歌ありがとうございました。楽しくやっている加納兄弟を思い描いて過します。
    -- 加納敏江 2014-02-15 (土) 11:44:22
  • 加納敏江様
     百万本のバラ拝読しました。なんと素敵な愛情表現でしょう。加納ご夫婦の強い絆が感じ取れます。加納兄弟はこの世を去っても誕生日に百本のバラが届くように手配されたのですね。素敵な兄弟ですね。きっと彼は現生に於いてすべての準備を終えて神のみ前に行ったのでしょうね。彼の模範を目標に私も励みます。
    -- 小俣孝 2014-02-25 (火) 18:25:06

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