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2014.09.09 エッセイ「少しだけ先輩の不安と苦しさを引き受けて」投稿者:昼寝ネコ

Astor Piazzolla, Aconcagua, II. Moderato

 
少しだけ先輩の不安と苦しさを引き受けて
 
 
投稿者:昼寝ネコ
 
先輩の再手術の日だったせいなのかもしれない。

将棋仲間で、私より20歳近く年長なのに、
私のことを「先輩」と呼ぶ先輩が、大動脈瘤の
手術を受けて、もう半年は経っただろうか。

退院後は元気な姿で久しぶりに対局し、
2戦2敗で悔しがる表情は、無邪気そうだった。
リベンジ対局に燃えていたものの、ほどなく
ときどき高熱と寒気に襲われ、再度検査を
受けることになった。

検査の結果、思ったほど悪くなく、無罪放免で
入院せずに済んだので、先輩は奇跡だと喜び、
ご家族の皆さんも安心されていたのだが、
最近また同じ症状が出てしまった。
精密な検査の結果、手術部位に細菌が残って
繁殖しているのが原因だと判明した。

再度手術を受けることになり、昨日が手術日だった。
自身の横隔膜を切り取り、心臓を包み込む、
そんな手術だと聞いていた。

昨日の午前中、徐々にキーボードの文字が
みえにくくなり、明らかな異変があった。
幾何学模様の光が細かく点滅し、確認したが
両眼とも同じ症状だった。

なので、脳梗塞なのかと思い、症状を検索したが
どうも違うようだった。そのうち、頭部で
違和感が拡がり、念のため血圧を測ってみた。
ずっと正常値で推移しているので、血圧には
異常がないと思っていたのだが、メーターが
どんどん上がり、上の値が200を超えてしまった。
久しぶりに高い数値なので、すぐに水分を補給し
後頭部をアイシングした。

じきに下がり始めたが、それでも170前後なので
仕事も無理をしないことにした。

夜、先輩のお嬢さんに電話して術後の様子を聞いた。
執刀した先生が明るい表情で、うまくいったと
いってくれたそうで、お嬢さんの声も明るかった。

私の方は、夜中まで何度も血圧を測ったが、
なかなか下がらず、眠気も感じなかった。

高齢で体力も落ちている状態で、手術台に
上る先輩の気持ちを想像してみた。
おそらく、覚悟をして臨んだことだろうと思う。

突然の私の体調不良は、もしかして先輩の
負いきれない苦痛の一部を分けてもらったのかなと
そう考えると、何か少し良いことをしたような
気になることができた。

毎月、厚木の将棋教室へ一緒に往復し、
車中でいろいろな話をしたことが思い出される。
あるとき、松本清張原作だという映画「駅路」の
話題になった。ゴーギャンの絵が好きだった
主人公は、定年後にタヒチに行くことを
楽しみにしていたのだと、まるで自分のことのように
語っていた。
先輩は、高齢ではあるものの、今でもまだ
青年の部分を保ち続けているのだなと、
ハンドルを握りながら、あれこれ想像を巡らした。

業界新聞社の経営をし、苦楽を経験された方だ。
80歳になっても、頭脳明晰で弁も立ち視野も広い。

今は、質素だが平安に生活されているようだ。
人生の晩年は、それが何よりなのではないだろうか。

穏やかに人生を懐古できる人は、多くの冨を持ち
あれこれ煩いが絶えない日々を送る人よりも、
ある意味では、幸福なのではないかと思っている。
 
 
 

  • 昼寝ネコさま
    私がその先輩だったら、そのようなことを分かち合いたいとは思いませんが…。
    心にかけてもらえているのは嬉しいことだと思います。

    季節の変わり目の健康管理は更に気をつけましょう。 -- パシリーヌ 2014-09-09 (火) 14:27:35
  • パシリーヌさん
    はい、有難うございます。目は誰にとっても大事だと思いますが、私も様々な資料を読んだり、文章を書いたりするのが仕事の主要部分ですので、なんとか延命したいと思いますし、とくに目は大事にしたいと思っています・・・といいつつ、かなり酷使していますけど。

    先輩の術後の様子はまだ分かりませんが、縁とは不思議なもので、交流していただいています。お見舞いの手紙を託しましたが、退院したら「生き直してください」と書きました。何歳になっても、生き直すことは可能だと思っていますので。先輩がどのように解釈されるかは分かりませんけどね。 -- 昼寝ネコ 2014-09-09 (火) 14:39:53

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