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2015.05.05 エッセイ「人をバカにして 」 投稿者:岸野 みさを

20070817_京都, Vivaldi 調和の霊感 第11番

「人をバカにして 」
 
 
岸野 みさを
 
人をバカにして                   岸野みさを

営業をやっていた若い頃、八王子のある農家の庭先でそこの家人と立ち話をしていた。
60代くらいの主婦である。と、そこへご主人らしき男性が裏庭から出て来た。
「内の人ったら、人をバカにして腰を曲げているんですよ、ハハハハハ」確かに腰が曲がっている。ご主人はこちらを見ることも無く、目礼して家の中に入って行った。笑えなかったが「人をバカにして」というのは可笑しかった。バカにしている訳ではないことを奥方は百も承知のことであろう。しかし、その言葉の裏に「元気だった夫がこんな風になって悔しい、悲しい」という気持ちや「いくら背筋を真っ直ぐにして、と言ってもその通りにはしない」という嘆きがあることを感じる。

それは30年も昔の話だが、最近は私の夫も人をバカにしている格好になった。椎間板ヘルニアという病名で、リハビリに1年も通っているのになかなか腰が真っ直ぐにならないのだ。自転車漕ぎがいいというので毎日多摩御陵の参道や陵南公園を廻ったり、自転車を押して歩く。

雪が降った次の日、いつもの参道で雪の少ない場所を探していると、2人の男性が近づいてきた。「ちょっといいですか?」と言いながら中年の男性がサッと着ていたジャケットをめくった。警察のマークが光っていた。「桜の代紋」という俗称で呼ばれている「日章」だ。
「住所氏名をお願いします」と、聞かれるままに答えると、もう1人の警官が自転車につけてある防犯登録を素早く確認していた。「どうも、うちの爺さんも心配なんです」呆気にとられている夫を後にして行ってしまったそうだ。何がうちの爺さんも?人畜無害の夫によくもまあ、職務質問なんかしたもんだ。
「よほど、ヨタヨタしてたんだろう」と夫が言うと、娘が「高級自転車が目に留まったんじゃない?」なるほど、若者が乗るような自転車だ。「ママちゃりのほうが背筋が真っ直ぐになるんじゃない?」「イヤ、あれがよくて買い換えたんだ」と夫は言った。

そうこうしているうちに8月15日、今度は私が椅子に上ろうとして、右足を椅子に掛けて左足も上に上げようとしたときに左膝がギクッと大きな音をたてた。エッ!何?この音。でも、ちょっと痛いな、と思ったくらいで2日が過ぎた。3日目。左足が痛くて歩けない。骨折でもないのに…。なんと変形性膝関節症だと診断された。「軟骨がすり減っていて、老化からくるものです。ヒアルロン酸を注射しましょう」と。関節液中にあるヒアルロン酸分子量が正常だと約400万あるのに、この病名が付くと250万に減るそうだ。

友人がメールで「穀粒のことで頭を捻っていたのですか?」と聞いてきたので「捻る頭がなかったので、足を捻りました。」と返信した。それから早や8か月が過ぎた。こちらもなかなか普通の歩行に戻れない。左足を引きずる。

教会の評議会で玄関に置いてある車イスを使って下さい、と長男が言われた。掃除当番は免除しますとも言われた。遠くにいる友人が「杖を使っているのですか?」と聞いてきた。気遣って頂くことは大変ありがたいことだが、喜んでいいのか悲しんでいいのか複雑な今日この頃である。あぁ、ついに来たのか老化現象!御年わたしゃ○○歳夫はそれよりⅠ歳若い。こんな事態は80歳過ぎに想定していたのに10年早いじゃないか~。

既にこの世を去った先達が「がんにだってなるわよ、ボケにだってなるわよ。それが年を取るということなのよ」と、かって言っていたことを思いだした。「足だって捻るわよ」というところか。

ホームティーチャーが通院していたという接骨院を教えてもらって行ってみた。若い医師だ。治療法が違う。見て触って、一目で浮腫んでいることを教え、電気治療をして特殊なテープを貼ってくれた。細く縦に切ったテープで貼り終わってから、見事な貼り具合だ、と思ってジッと見ていると「芸術的でしょう」と自分で言った。筋肉の働きの説明から始め、痛みのコントロールについて話してくれた。初めての患者と良い関係を築こうと熱心に話を聞き、そして話す。まずそれに感心してしまった。30分待って3分の診療とは異なる。約30分の診療時間だった。最初の時「これ痛いですか?」ときかれたのは、膝を下に押さえつけた時だ。それが治療が終わって「どうですか?」と再び膝を抑えつけられも、なんと痛くない!驚きだった。歩き方も「左足に体重をかけて歩いて下さい」8か月も左足の膝を伸ばしきらずに曲げたまま、浮かして歩いていたので、「以前歩いたように、普通に歩けるでしょう?」と言われて可笑しかった。そういえば以前は普通に歩いていたのだった。歩行訓練を何往復かして最初の診療は終わった。開院したばかりのせいか紹介者名を書く欄があった。ホームティーチャーの名前を書いたので、帰る時に「よろしくお伝えください」と言われた。

2回目は夫を連れて行った。色々説明しているようだった。夫は最初行かない、と言っていたのにやはり行く、とうことになって診療が終わって帰る時、「治療法が違うねぇ」と言って満足そうだった。整形外科では伝統的な治療法は行わない。

次の日夫は一人で自転車に乗って行った。途中小学生の女の子がサーッと自転車で追い越して行き、振り返って見たという。心配してくれたのかな?

5回目の通院の帰りに外に出ると変わった歩き方をしている私より若い女性がいた。右足を前に出すとき一回ちょっと上に振り上げるのだ。どこがどうなってああなるのか先生に訊いてみよう。先生は接骨院を開院するまで、近くの○○大学柔道部の整復に北区から通っていたそうだ。15年間で30万人の患者を診たそうだが、最初は手持ち脚持ち4年間といって、患者の骨折した手や脚を支えている仕事から始めるのだという。少しでも動くと痛がるのでそれは大変な仕事だったという。

Ⅰ句献上。

足腰のままならぬ日もボタン咲き
 
 

  • 投稿を有難うございました。 -- 昼寝ネコ 2015-05-05 (火) 16:35:45
  • 面白おかしく生活することの大切さを学んだ気がします。
    関節症お大事になさってください。
    昔、マサ姉妹から学んだのは「そこに思いやりや愛が溢れるのなら、体が不自由なのも悪くない」というものでした。私も感謝を絶やさないで、ありがとうありがとうと言って若者の世話になる存在になるのもいいかな?って思ってます。
    若者が構ってくれるように、可愛い爺さん目指そうかな。 -- downy49 2015-05-05 (火) 17:04:20
  • 皆さま
    ヒアルロン酸はアンチェンジングの美容のために使うそうですね。
    Γ体が不自由なのも悪くない」そこまで行かない中途半端なんです。 -- 岸野みさを 2015-05-05 (火) 17:33:59
  • 毒にも薬にもならない(人畜無害の同義語 笑)ご主人に一句献呈します。『足腰を鍛えりゃ徘徊間違われ』 おまわりさんはうちの爺さんに重ね合わせたのでしょう。 そのうちバイクで徘徊するご老人が登場したりして。「がんにだってなるわよ。ボケにだってなるわよ。足だって捻るわよ。腰だって曲がるわよ。徘徊にも間違われるわよ。席も譲られるわよ。小学生もチラ見するわよ。席を立って用事忘れてまた座るわよ。何もないのにつまずくわよ。あれ、これ、それで会話が通じるわよ。だからナニッ!」 -- 米粒太郎 2015-05-05 (火) 17:39:44
  • 感心しながら読み終えました。この医者と作者の対応に。お大事にしてください。わたしは左手の親指が時々曲がると伸びなくなって、痛みを伴い使えなくなります。そのうちよい医者を探さなくてはと思っています。 -- 沼野治郎 2015-05-05 (火) 18:33:52
  • 笑ったり、関心したり、納得したり、楽しく読ませて頂きました。自分では余り変化してないつもりでも年齢は確実に身体老化となってます。同窓会の挨拶で 白髪も皺も腰痛も
    今の私たちの勲章です。と言って拍手を受けました。 みさを様良いお医者さんに出会い良かったですね。私は以前より 外出がおっくうになり家に居ると安心します。これも老化現象でしょうか?今朝何食べったっけ?自分で何回もご飯作って食べるようになっちゃうかしら?-- かたくりの花 2015-05-05 (火) 19:16:42
  • 米粒太郎さま
    ホロ苦笑の一句ありがとうございました。徘徊老人と見られたのであれば、見守られていることを感謝するべきでした。 -- 岸野みさを 2015-05-06 (水) 16:44:43
  • 沼野治郎兄弟
    それは不便で大変ですね。原因があるのでしょうが、私たちは接骨院の医師にもっと早く来てほしかった、と言われました。私たちの場合は根治療法では無いことは分かっているのですが、何とか機能不全に陥らないようにと願っての通院なのです。
    -- 岸野みさを 2015-05-06 (水) 16:51:13
  • かたくりの花さま
    自分で料理ができるうちはボケていないそうです。まず、味覚がなくなるそうですから、塩と砂糖の区別がつかなくなるということです。人の進歩の過程で老化現象は必要だと教えられていますが、主から幸いを受けたのだから、災いも受けようではないか、というようにしか思えず、そのみこころが分かっていないのです。 -- 岸野みさを 2015-05-06 (水) 17:00:46
  • 皆さま
    モーセの言う「つぶやき」は不信仰に入るので、自分で聖典を調べてみました。D&C88:42に答えがありました。「神は万物にその時とその時期に応じて運行する律法を与えた」私たちはこの地球に与えられた律法の中にあり、霊の世界の律法ではなく、現世の律法の中にある。肉体の欠陥や病、災害や戦争で多くの人が死ぬのを神はそのままにされておられる。ボケや老化現象も然り、という理解で正しいのでしょうか? -- 岸野みさを 2015-05-08 (金) 05:42:31

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