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15083101 火の玉

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2015.08.31 エッセイ「火の玉」投稿者:岸野 みさを
次女(孫)の夏休みの読書感想文を書く本を読んでみた。

Γひきあげのときみた火の玉」松谷みよ子著。

これは著者が15年戦争が終わったとき北朝鮮から38度線を命からがら 逃げて来た時に見た実話だ。
一つの国だった朝鮮は北と南に分けられて今の韓国と北朝鮮になった。二つの国の国境が38度線。ここを越えないと日本に帰ることができない。
  ソビエトの国境警備隊がパトロールを休止する15分間に 38度線を走り抜けなければならない。
避難民は 近くの松の木の下に集合して隊長の話を聞いた。隊長は子供たちを見つめながら「たった一つ注意してほしいことは子供を泣かせないこと。もし子供が泣いて泣いて泣きやまなかったら、その子を始末すること」と言った。
大人たちの話し合いが終わって解散したとき子供たちは 集まって真剣に話し合いを始めた。
寝るとき大人に置いていかれないように皆の足を紐で結わえていっしょに寝よう。そして最後にそれを大人の足に結わえるんだと。 Γ最後の大人の人は誰にするんだ?」
Γうちの母ちゃんにしよう。うちの母ちゃんは、絶対に僕をおきざりにしない」
逃げてくる途中でたくさんの子供たちが道ばたで死んでいたのを見てきた子供たちだ。

赤ん坊をおんぶした著者は辛い気持ちで歩きだすと小さな男の子が一人ぼっちで遊んでいた。
地面にしゃがんで木の棒でいたずら書きをしている。
何気なくその子を見つめたとき著者はΓあっ!」と声をあげそうになった。 青白い火の玉がその子の体にまつわりつくようについたり離れたりしながら飛んでいるのだ。その子は痩せていて顎が尖っていて目だけが大きかった。

次の朝38度線を越えるためにみんな並んで出発した。山を越えて夕方近くいよいよ38度線の国境のすぐそばまできた。ソビエト兵の姿が見えるほど近くでここを一人ずつ走って突破するのだ。

「シー静かにしろよ、合図したら走り抜けろ」
「声出すなよ、子どもを泣かせるなよ」
シー、シー。
ところがワッーと泣き出した子がいた。皆の顔色が変わりその子の父母が必死になだめてもその子は泣き止まなかった。
「始末しろ、始末しろ」
周りの人たちが恐ろしい言葉を発したのだ。
その子の父親はその子を小脇に抱えて森の中へ入って行った。連れていかれた子は昨日のあの子だった。体の周りをまとわりつくように火の玉が揺らめいていたあの子だった。

泣き声はもう聞こえなくなった。
一人で出て来た父親の手に手拭いがぶらんぶらんしていた。

あの子の魂は次の日に死ぬのだと分かっていたので火の玉になって抜け出していた、という実話。(おわり)

子どもたちにこの話をした後、近くに住む妹が葱を持って来てくれたので、裏の畑に植えている時5年生の長女が質問してきた。
「お父さんはどうやってその子を始末したの?」
「森から戻ってきたお父さんの手には手拭いがぶらんぶらんしていた、とあったでしょ?」
「絞殺したの?」
「そういうことになるね。普段はこんなことはないのよ」
「分かっている」
「戦時下では人間が人間でなくなるのよ」
「……」長女は黙りこくってしまった。

同じ本に掲載されていた「対馬丸」(小沢清子著) の話を読んでママは泣いてしまった。

大東亜戦争末期の沖縄の実話でママはそれを知ってはいたが火の玉のことは知らなかった。

沖縄戦に備えて日本全土から兵士が沖縄に集まったので食料が不足して、多くの児童が鹿児島等に疎開することになった。

約700人の子供を乗せた対馬丸は東シナ海を航行中アメリカ軍の魚雷に攻撃されて全員死亡した。

漁をしていた漁師がまた一つ、また一つと何百何十という火の玉が暗い海の上をいっせいに沖縄に向かって飛んでいくのを見たという。 子どもたちの霊が沖縄にいる父母のもとに戻って行ったのだ。

次の日、長女は「火の玉のことを考えながら眠ったら夢を見たの」
「ヘー!」
「沢山の火の玉に目や鼻や口があって、その顔は『希』(NHKの朝ドラの主人公)だった。
お茶会をやっていて、あなたもどうぞ、と言われ、すると目が覚めた」
「希(マレ)のケーキを食べそこなったということ?」
「うん」

  • 岸野みさを様のお孫(次女)さん かなり深刻な内容ですが赤いフレームのメガネをかけて一生懸命読んだのですね。アンタはエライ。松谷みよ子先生は有名な児童文学作家でもあります。松谷みよ子責任編集「火の玉レストラン」(童心社)もお薦めします。興味があったら読んでみてね。長女さん『まれ』の次は9月28日(月)スタート『あさが来た』です。ケーキはでません。 -- ファイヤーボール 2015-09-06 (日) 17:17:38
  • 夏休みの宿題にチョイスする本にしては、シリアスすぎのような(^^;;。しかし素晴らしい。お孫さんはどんな感想文を書いたのでしょうか。小学生の感性、視点で究極の状況をどう捉えるんでしょう。そうやって、子供は磨かれ成長するんですね。 -- コニー 2015-09-14 (月) 21:45:44
  • コニー様
    確か「友達が読んでいたから借りた」ということらしいです。「どんな感想文を書いたの?」
    と質問しましたが「まだ書いてない」でした。私も気になるので再度確認してみます。 -- 岸野みさを 2015-09-15 (火) 14:52:22
  • ファイアーボール様
    その「火の玉レストラン」で読みました。 -- 岸野みさを 2015-09-15 (火) 14:55:16

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