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17031804徳沢愛子

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2017.03.18 詩・散文「寸詩」 投稿者:徳沢 愛子

晩秋 真夜中の小水 寂しさの水音
みんないなくなる

寂しさが君を大声で歌わせる
あんな祠のような大口で

更けゆく夜の底へ クモは銀糸垂れ
寂しさを釣る

虫は眠らず歌っている 私は眠れず考えている
歌うのと 考えるのと どっちも どっちだ

体横たえる 虫の音ふけてゆく どうしよう
もない修羅 お前にもあるか

耳を済ませば 父母のいたふるさとの庭
笹の葉ずれが心をくすぐる 緑の絵筆のように

しみじみ美味しい この身の前の白い新米と
梅干し一つ 儚い身を今日も養のうて

すべて動かぬ夕べ 水底まで夕映え
世界はまっ赤に口を閉じている

ひまわりの畑ここを永住とし 墓とし 入道雲
仰いで どっしり大地と手をつないでいる

梅雨明け 木も少年も 大胆不敵

人里離れて独り 風と雲の下 手も足も
大空に溶けていく

河北潟埋立地 西瓜ごろごろ 人の声 風の
声 小鳥の声 大オーケストラ すべて善し

炎天下 日日草を見ていたら 顔が柔らかく
なってきた その上を小さな風がこそがせる

くしゃみ号砲 確かに生きています しばし
世界は沈黙します せいせいとした沈黙です

父母妹弟 滅びゆく者 みな懐かし
彼岸花咲く 花火の形して

大向さんは老人施設 お隣さんはあの世
悄悄とカナカナが鳴く 夕焼けにまみれて

昼下がり 波の音ばかり 耳を打つ永遠
白い波頭 目を打つ永遠

アラレ石の上で踊っている
あの激しさは今日の私

  • そして誰もいなくなることへの深い寂寥感の中で「白い新米と梅干し一つで儚い身を今日も養しのうて」と詠う詩人の魂は岩に打ちつけては砕ける白い波頭のようで、「あの激しさは今日の私」であると確かにそのように思います。眠らず考えたことのない私には本当のところは分からないのですが…… -- 岸野みさを 2017-03-19 (日) 21:09:12

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