17062401徳沢愛子
2017.06.24 詩・散文「老い」投稿者:徳沢 愛子
二の腕を出す盛夏
汗くさい幼稚園の孫が駆けてきて
白い小袖を「さわらせて」と言う
つきたて餅より 淡く
たらたら 揺れる
〈きもちいーい〉
〈一回さわるたび 100円いただく〉
〈いやーん〉逃げていく
〈どうだ 羨ましいだろう〉
白髪 しみ しわ たるみ
生の中に死が紛れこんでいる
いつの間にインベーダーは侵入したのか
許可なく不埒千万な奴め
君は梅の老木を見たことがあるか
太い幹は大洞(ほこら)となって
茶色の木くずに溢れている
そこからうまい茸(きのこ)が生えてきそうな
老木は腰曲がり 手曲がりしているが
その曲がった所から 可憐な梅の花
その香りがまた いい
時間のカビが木を解体する
解体の中から
老木の梅は 死の門口まで
再生を続ける
馥郁たる香 放ちつつ
幼い君よ
この老木の下で
永遠の時間が見えるか