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18041902岸野みさを

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2018.04.19 エッセイ「年経(ふ)れば(5)」 投稿者:岸野みさを

足腰丈夫な者は
 80歳はとっくに過ぎている婦人がスタスタ歩いていると、畳やさんの若い者が手押し車に4枚の畳を積んで坂道を引っ張り上げようとしているのが見えた。「お手伝いしましょうか?」と聞くと「お願いします」と言われて、「それっ」と押し上げると難なく登ることができた。「あゝ 助かりました」と若い者はにっこりしてお礼を言った。「どういたしまして」と彼女は答えたが、本当は「坂道はね、引っ張り上げるのではなく、押しあげるほうがいいのよ」と思ったそうだ。
知り合いの引っ越しの時も彼女が一人で荷物をキャスターで持って行くと「えっ、一人で坂道をどうやって持ってきたのですか?」と驚かれたそうだ。「坂道はね、斜めにジグザグと登るのよ」と答えたそうだが、ジグザグと登ったことがない知り合いにはよく分からなかったようだ。

社会参加
 作業所になって障害者に仕事を与えてほしいと依頼されたパン屋さんで何人かを雇った。
パンの袋詰めだが皆さんよく働いていた。ところが市役所の人がきて、一人の人はその作業が難しいのでもう少し簡単な作業の所に廻します、ということだった。最後の日その人は雇い主に手紙を渡したそうだ。手紙には皆さんに親切にされたこと、仕事が楽しかったこと、以前からパン屋さんで働いてみたいと思っていたことが書いてあった。アメリカでは三つまでしか数えられない人に大きな三つの穴のある箱の穴に釘を一本ずつ入れて、それを束ねる作業があるという。こういう作業は本人の能力に合っているかどうかが大事だ。難なくパンの袋詰めの作業をしていたのにどうしたのだろう?
話は少し違うが以前あるイベントでサンドイッチを何人かで作っていた時一人の統合失調症の男性がパンにバターを塗るのにバターナイフを使わず自分の指で塗っていたと聞いたことがあった。

危ないですよ
 三叉路のバス停近くで車道の脇に出て立っているおばあさんを見かけたAさんは車を止めて降りて行き「危ないですよ」と声をかけると「〇○医院へ行きたいんです」と言った。
そこへ丁度バスがきた。乗ろうとするおばあさんに「このバスは反対方向です!」と言うと、おばあさんは「いいんです」と言ってバスに乗り込んでしまった。Aさんは呆気にとられてしまった。反対方向にも用事があるのか?あるいは認知なのか?

お客さん色々
 八百屋さんのいちご売り場で何やら質問しているおばさんがいた。甘王の大粒で3パック1200円だが1000円でいいという。「それ甘いの?」と訊く。「甘いですよ」「そう?見た目じゃわかんないわよね」すると隣りにいたおばさんが「いまどきのいちごはどれも甘いわよ」と言って指さした。「まいど!」すると「1パックでいいわ」と言う。1パックで買うと480円だった。ごちゃごちゃ言っていたおばさんの方は「じゃ、3パック」と言って買った。どっちも大事なお客さま…

人に親切とは
 ある日パパは道路でおばあさんが何かに躓いたのか前のめりに倒れてしまったのを見た。誰も知らぬふりして、す通りして行く中で「大丈夫ですか?」とパパが近寄ると膝が痛そうに起き上がって「大丈夫です」というのでその場を離れた。子どもたちにその話をするとママが「病院へ行くように言わなかったの?」と聞いた。「言わなかった」するとママは「お年寄りの転倒は怖いのよ」すると娘が「パパは自分が声をかけたことを自慢したいだけなの?本当にそのおばあさんのことを心配すればママのように言うと思うよ」「………」


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