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2018.05.16 穀粒記者レポート・『「少年たちの群像(18)」』投稿者:岸野みさを

 始業式の次の日から3日間宿泊研修で蓼科高原に行く私立高校。先生の説明では、「行きのバスはシーンとしていても帰りは『静かに~』と言っても聞えない状態になりますよ」という。A君が同じクラスになった一年生をどこかで見たようだと考えていると、あっ!小学校6年間一緒で、野球をするために有名中学に行ったはずの彼だったが…

 宿泊研修。外で飯ごうでご飯を炊く活動があった。皆んな火が起こせない。唯一火を起こせたA君はひっぱりだこだった。「ボーイスカウトはすごいね」と言われA君は嬉しかった。それに何人も「煙いよ」と言ってテントの中に入ってしまったという。

 「友だちは自分から作れ」と言われているのに、作られてしまったようだ。二人のハンディのある男子生徒がA君の側に来て離れなかった。一人は笑わせようとしているのか、「イー」とか言って変顔ばかりするし、もう一人は話しかけても言葉を発しなかったという。

 カッコいい野球部のピッチャーが「お前A軍、お前B軍」と勝手に仕切っていて、A君には「お前A軍だ」と言い、おまけに「音楽祭のコーラスはお前が指揮者だ」と言ったそうだ。その場の空気を読むA君は「ハイ」と答えたが人の意見を聞かないやりかたは苦手だった。

 部活が終わって次女が雨に濡れて帰ってくると足が臭かった。ママが「シャワーを浴びなさい」と言っても座り込んだ次女は動こうとしない。「足が臭いから足を洗うか、シャワーを浴びなさい!」それでも次女は無言で動こうとしなかった。「聞こえているの?足が臭いんだよ!」カナきり声になったママに突然その場にいた長女が掴みかかってきた。「足が臭い、足が臭い、って言うんじゃない!」驚いたママは「あんたに言ったんじゃないわよ」と言いながら掴まれている腕を振りほどこうとしても長女は「死ね!」と言って突き倒そうとしてくる。「死ね、って何よ!」次女と次男はそれを見て泣き出してしまった。そこへ騒ぎを聞きつけて2階から降りてきた長男が「やめろ!」と言って二人を引き離した。
図体が大きく173㎝の身長、80キロの体重の長男に腕を捕まえられてしまったママ。足で長男の足を蹴っ飛ばすもびくともしなかったそうだ。
 その話を聞いたばあは「思春期なんだからさぁ、足が臭い、と言われるときついよ」というと「次の朝、ご飯食べる?と聞くと、うんと言って普段と変わらなかったわ」という。「ね、反省したのよね」とばあ。
 親も子どもの成長と一緒に成長するのだが、親と取っ組み合いの喧嘩なんかしたことのないママには可哀そうなことだと思った。その長女は今まで、ママが親子喧嘩をしたことがあるのか、とか兄のおじちゃんと喧嘩したことがあるのか、とばあに度々質問してきた。
長女は親子喧嘩も兄弟喧嘩も嫌なのだと思って聞いていたのだったが……


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