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19061701徳沢愛子

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2019.06.17 詩・散文「秋」 投稿者:徳沢 愛子

明け方 目覚めると
肩の辺りに秋が来ていた
朝露に濡れた落葉の下に
首すくめる地虫の気配がする
私の心も襟巻に包んで
いくつもの過ぎていった秋の扉を
ギイーッと推してみる
働き者の父の厳しい声がする
畑で蹲る母の背が見える
疲痢で早逝した妹の
赤いランドセルがカタカタ鳴る
お酒で陽気になる弟の
演劇的笑い声
死者たちはさざ波を起こして
私を囲む
鋭く明けていく空に
淡いオレンジ色が撤かれる

ああ私は私の弱さを脱ぎ捨てよう
私が見えてくる
小さい小さい私が
死者たちの温もりに溶けていると
朝の光が漲ってくる
私の中にも漲ってくるものがある
眉のあたりを押し上げるものがある
キリッとした秋の指先
それはひんやりしていて
もう一度私を
キッパリ目覚めさせる

  • 秋の扉を推してみると父母や弟妹の生前の姿に取り囲まれる。そして自分の弱さを脱ぎ捨てようとキッパリと目覚めさせられる。芯がぶれない作者の生きる力を感じます。 -- 岸野みさを 2019-06-20 (木) 21:58:45

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