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2020.03.26 自分史・家族史「ジョセフ・スミスの見神が神学界に投げかけた波紋」 投稿者:沼野 治郎

ジョセフ・スミスの見神が神学界に投げかけた波紋

 今年2020年はジョセフ・スミスが最初の示現を受けてから200周年に当たる。今を去る15年、2005年にジョセフ・スミス生誕200周年を迎えた時、米ワシントンDCの米議会図書館で教会内外の専門家が記念シンポジウムを開催した。そしてその内容がBYU紀要の特集号(2005年44巻4号)に掲載されている。以下、見神に関する部分を要約紹介したい。

 BYUのデービッド・ポールセン哲学教授が「ジョセフ・スミスは神学界に波紋を投じた」と題し、四つの点を挙げた。
その第一は今日神が直接啓示を与えられるようになったということである。このシンポジウムに出席したオークス長老も最初の示現は啓示が継続して与えられることの鏑矢(かぶらや)であったと述べている。
第二は神が神聖な権威を人類に回復されたこと、特に神の御名によって語り行なう権能を与えられたことであり、その結果の一つとして正典の枠が拡張された。
第三はイエスが神であり救い主でもあるという、明確なキリスト理解を確認したことである。
第四に神は哲学者や神学者が描く神ではなく、旧約聖書に出てくる生ける神(アブラハム、イサク、ヤコブの神)であることを再確認したことである。

 以上は、私を含め多くの日本人が新鮮な驚きをもって末日聖徒に改宗したきっかけであると思う。そしてこの末日聖徒の宗教は活力に富み、改宗した私たちと周囲にそれを感じさせてきた。しかし、英国のダーラム大学教授ダグラス・J・ディビースが指摘するように制約(問題)も負っている。

 それについて述べる前に日本の教会員はあまり聞いたことがないかもしれないが、最初の示現には幾つかの異なった話(version)が伝わっていたことに触れておかなければならない。教会の公的サイトの「福音のテーマの論文」にも掲載されているように主要なものが4つある。ごく簡単に記すと次のようになる。

 1832年 罪が赦されたと主から告げられた。「主」の言及があるのみ。
 1835年 敵対する者の妨げを感じた。どの教会にも加わらないよう告げられる。お一方が現れ、次いでもう一方が現れた。一人の天使の現れにも言及。
 1838年 今日公的に伝わっている最初の示現。
 1842年 祈りに答えてお二方が現れた。完全な福音が将来知らされる。(それまでの内容に少し修正を加えてシカゴのメディアに送っている。ウェントワース書簡)。

    
 4つの異なった記述が残っていることについて、ジョセフ・スミスの記憶の問題であるとか、強調点が異なった、彼の認識が生成進化したなどの説明が試みられた。また、宗教学界でこのような場合、史実性を巡る議論をするよりその宗教が後にもたらしている果実と意義に注目すべきであるという考えが浮上している。ヒンクレー大管長も福音書が4つあっても問題がないように、最初の示現は検証や詮索の対象とすべきものではないと語っている。

 最初の示現以降、モルモン書を得て回復されたこの教会は、顕著にアメリカ的特性を具えている。この地(アメリカ)は約束の地である、キリストはアメリカを訪れられた、神の国シオンはアメリカにある(少なくとも当初)など。また、政治・世俗的観点によっても、アメリカは世界最強の国として、世界に対する使命を帯びている(多くの米国人の心理) - - そのアメリカが背後にある当教会はアメリカとの結びつきが強い。このことは有利に働きもし、不利にも働いて制約となる。アメリカを好ましく思わない地域が存在し、またアメリカの覇権も永続するわけではないからである。

 上のことと関連するが、アメリカ的色彩を薄めて幅のある、大きな世界宗教となっていくかどうかが問われている。教会はすでにその片鱗を具えていると言えるが、英国のD.J.デイビースは世界宗教と言われる宗教は出自の地との結びつき(拘束)が弱まり、伝道先の社会や文化が持つ価値・規範を吸収してゆくものと見る。実際には既にラテンアメリカ、アフリカ、日本にそれぞれその地の特性と融合した何々式末日聖徒が存在しているのであろう。しかし、最近とみに感じられる米国本部の中央集権的傾向はそれに逆行するものであり、制約となる可能性がある。

 新型コロナウイルス感染症が蔓延するこの多難な2020年にあって、それぞれが自分の信仰を改めて考察し、残された人生をどのように生きるか、また次世代の末日聖徒のために何を残していけるかを熟慮したいものと思う。

参考:
・David Paulsen, “Joseph Smith Challenges the Theological World” in ”The Worlds of Joseph Smith.” A Bicentennial Conference at the Library of Congress. BYU Studies, Vol. 44, No. 4, 2005.
・福音のテーマの論文、最初の示現の記録https://www.churchofjesuschrist.org/manual/gospel-topics-essays/first-vision-accounts?lang=jpn 
・Douglas J. Davies, “World Religion: Dynamics and Constraints,” in “The Worlds of Joseph Smith.”
・Stephen C. Taysom, “Approaching the First Vision Saga,” Sunstone June 2011.
・マーク・R・マリンズ著、高崎恵訳「メイド・イン・ジャパンのキリスト教」2005年

  

  • 示現や啓示は継続しているので最初の示現に関するいくつかの説があっても継続しているという事実の方を私は重要視したいと思います。後者に関しては国家観を見失い、民族の特性や、文化と伝統、歴史に無関心になっていくメイド・イン・ジャパンのキリスト教徒に、何故この日本というブドウ園に植えられたオリーブであるのか考察してほしいのですが………
    -- 岸野 みさを 2020-03-28 (土) 11:03:06

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