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2021.04.21 詩・散文「カルーセル・エルドラドー時を超えてー」 投稿者:米村 晋

詩と詩論「笛」2021年4月295号より転載

「回転木馬(カルーセル)・黄金郷(エルドラド」は
一九〇七年 ミュンヘンで造られ
世界最古の世界機械遺産に認定
製作はドイツの著名な遊戯場経営者
ヒューゴー・ハ ツセ
木馬 馬車 ゴンドラなどすべて手彫り
馬の表情がそれぞれちがう
アール・ヌーボー様式の繊細・豪奢
見る者をまるで「黄金郷」に誘う

ハツセの一人娘 アン
飼っていた仔馬を病気で亡くし
ひどく悲しんでいた
ハツセはアンのために
回転木馬「黄金郷」を造り

その中に死んだアンの仔馬に似せて
小さな可愛い木馬を加えた
ハツセはその額の鬘(たてがみ)に隠して
金のティアラを取り付け
アンは彼をフィリー(仔馬)と名付け
可愛がっていた

ドイツで第一次大戦が勃発
「黄金郷」は戦火をさけるため
ニューヨークのコニーアイランドに売却
アンはフイリーの胸の中に
別れの詩を刻んでもらった
「Round Round Carousel
Sparkle eyes Brightly mane ( たてがみ)
Cutely  filly lovely  filly ( こうま)」

美しく愛らしい仔馬のフィリーは
アメリカの子供たちに愛され
大統領や有名女優達も訪れた
一九六四年 コニーアイランドは閉園
アメリカで五三年間を過ごし
老朽化した「黄金郷」は解体
日本の遊園地・豊島園が一億円で購人
老朽が激しかったが修復に二年
一九七一年(昭和四六年)日本デビュー
天井には在りし日のまま
沢山の天使たちが舞い電飾の舞台
日没直後のブルーモーメントでは
薄暮の空に木馬館が浮かび上がった
部品一つをとっても美術品として
価値ある装飾をまとっていた
日本の子供達は競って遊びに出かけた

二〇二〇年(令和三年)豊島園は閉園
「黄金郷」は独米日の三国にわたる
一一三年の歴史の大半を日本で過した

  西武豊島園駅から信号一つで
  豊島園のゲートウェイ
  幼い峙は母の手に引かれて
  やがて恋人と腕を組んで
  妻や子供とも連れだつて訪れた

それも今夜限り
ファイナル・セレモニーの終った
人気ない夜更けに 突如
木馬の回転がはじまりテーマ曲が響く
電飾に輝く
疾走のフォームのままに
フィリーは宙に駆け登る
風にみだれる鬘の問から
輝く黄金のティアラ

  故郷ミュンヘンの黒い森を目指し
  無量無辺の空を飛ぶ
  幽かに聴こえるアンの呼び声を辿り
  遥かなる時を超えて
  彼女が眠る奥つ城に
  たどり着くまで

  • カルーセルは113年もの間、世界中の子供たちや大人たちに夢とファンタジーを与えて、使命を終えても尚、このように語り継ぐ人が現れて歴史に残ったのですね。稀有な作品をありがとうございました。 -- 岸野 みさを 2021-04-27 (火) 22:41:58

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