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21070301徳沢 愛子

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2021.07.03 詩・散文「金沢方言詩 バラの心」 投稿者:徳沢 愛子

あの頃
五人の息子たちの子育ては
すべて 命令 であった

 あれせんかいね 早うらと
 これせんかいね 早うらと
 それせんかいね 早うらと

小学生までは全員統制がとれていた
その命令には トゲがなかった はず
溢れる愛情の発露やもん
約束破れば布団たたきで 一発
はしかい子はズボンの中にタオル人れて
ふくらんだ おんどべ 差し出した

あれから四十年
荒波の社会へ出航した息子たち
日焼けした顔で 命令する
母親の私に

 あれやめんか  出しゃばらんと
 これやめんか  出しゃばらんと
 それやめんか 出しゃばらんと

腰 痛い 膝 痛い 指 痛い
このよれよれになった母親に命令する

よれよれのせいでちょっと哲学者
 トゲのある深紅のバラは
  深い愛のしるし

息子たちの言葉にトゲが
あつたか なかつたか
バラの赤さのような愛が
あったか なかったか
四十年かけて
あるとしても ないにしても
男はほんまに 愛想んなかった

幕の向こうの父母に
バラの赤さだけをあげてたつもりやったけど
やっぱりトゲもいくつか
娘の私に見つけたにちがいない
やっぱり優しさのオブラートが
もっと欲しかったにちがいない

いまならわかる バラの心が
息子にしても 娘にしても
男にしても 女にしても

詩と詩論 笛 2021 7 296号 より転載

  •  澁澤栄吉の父親の言葉
    「この歳になるまで孝行は子が親にするものだと思っていたが、親が子にするものだったとはな!」
     親と子が逆転する歳があるのかもしれませんね。 -- 丸山 幹夫 2021-07-03 (土) 14:57:43
  • 渋沢栄一の間違いでした。
    失礼いたしました。 -- 丸山幹夫 2021-07-03 (土) 16:25:47
  • 荒海の社会へ出航した逞しい5人の男たち、見事に育て上げた母として大変ご苦労さまでございました。彼らにも、通ってみなければ分からない道がまだ残されているのですね。 -- 岸野 みさを 2021-07-03 (土) 21:46:15

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