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2013.06.14 音楽評論「ピアソラの世界における天使と悪魔の境界線(その2)」 投稿者:昼寝ネコ

Astor Piazzolla: milonga del angel

ピアソラの世界における天使と悪魔の境界線(その2)

昼寝ネコ

つい数時間前に、ピアソラの「悪魔の組曲」から
1曲をご紹介しました。

標題の曲は
「天使の組曲」の2曲目の天使のミロンガ、
Milonga del ángelです。
悪魔の組曲を紹介したのに、
天使は紹介しないのか、とお叱りを受けそうなので・・・。

バンドネオンを演奏しているのは、ピアソラ自身です。
そういう意味では、貴重な映像のひとつです。

よく観察していただきたいのは
ピアソラ自身、そして協演している演奏家の
皆さんの表情なんです。
これほど内省的な曲想、そして自己の内面の深層を
音楽的に再生している演奏は少ないと思うのです。
同じ曲を演奏しているという点では、もちろん
共有している世界があるのですが、
個々の演奏家の、似て非なる苦悩と葛藤、
そしてさらにいうなら、悔悟と憐憫が統一的に
錯綜している、とても希有な世界だと思います。

以前、ピアソラのバンドが、アジアの著名なチェリストと
リベル・タンゴを協演した動画を観ました。
彼はとても知名度の高いチェリストですし
技術的には卓越したレベルなのだそうです。
でも、独りだけ見事に浮いてしまっていました。
つまり、ピアソラの曲を演奏するには
ある種の感性、メンタリティー、そして
人生に対する深い洞察と理解、
憐憫と寛容さが不可欠であり
それなしでピアソラの曲を演奏しても
心には響いてこない、というのが持論です。
アジアのある国の若いグループが、
なんとあろうことか、ピアソラのOblivion(忘却)を
ボサノヴァにアレンジして演奏しているのを聴き、
とても悲しくなりました。冒涜です。

さて、この「天使のミロンガ」を、ピアソラは
どんな心象で作曲したか・・・。
本当は、天使には翼なんてないんですが、
天上からの神聖な使者のシンボルとして
描かれているのではないでしょうか。
地上で苦難を背負う人々のために働くのが
天使の使命なのですが、何かの理由で
その象徴としての翼が、取り去られてしまったのです。

天使とて、完璧なわけではなく
心の迷いやためらい、あるいは恐れなどから
一歩前に踏み出すことを躊躇してしまうこともあります。
そんな天使に対する、天からの一時的な懲戒として
翼を取り去られてしまった情景を、きっと
ピアソラは思い描いていたに違いありません。
つまり、善良な人間の内面に存在する弱さを
寛容な眼差しで見つめる、憐憫の情が
この曲を作らせたような気がします。
それはピアソラ自身のことなのか、あるいは
ピアソラを捨て去り、あるいは裏切った人間への
寛容な赦しのメッセージかもしれません。

モチーフが悪魔であれ天使であれ、ピアソラの世界には
心の奥深くまで伝わってくる、まことに不思議な
音楽的メッセージが満ちているように思えてなりません。


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