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2013.12.24 エッセイ「クリスマスの遺言」 投稿者:昼寝ネコ

Astor Piazzolla - Choral, Suite Punta del Este

 
クリスマスの遺言
 
 
 
昼寝ネコ
 
このクリスマスの時期に、私は自分の殻を脱ぎ捨て、
新たな自分として生き直そうと考えた。
きっかけはなんとでもいえる。

ひとつは、ピアソラの少々長いこの曲を
じっくり聴いてみたことによる。
この世が終わり、廃墟と化したかつての栄華の街々。
取り憑かれたように人を押し分け、辿り着いた虚空。
灰燼に帰した不毛な栄誉と虚言。
果てしなく拡がる静謐な空間に独り立ち尽くすと、
誰もいないはずの背後に視線を感じる。
そこには悲しみを湛えた物言わぬ黒い瞳。
見捨てた人々の心の痛みが一気に押し寄せる瞬間。
全てが終わったはずなのに、終わってはいない。
ここが残酷な出発点となることを知る人がいる。

もうひとつは孫娘に贈った絵本の一シーン。
旧約聖書では、たくさんの種類の動物がひとつがいずつ
方舟に入れられる、と説明されている。
絵本に描かれているのは、方舟に招かれずに
残された動物たちが、方舟に入っていく仲間を
寡黙に見送る後ろ姿。
その後に襲う洪水に覆い尽くされることを
知っていたのか、あるいは感じていたのかは知らない。
多くの屍を乗り越えて突き進む勝者の足許には、
名も知らぬ人々の涙と苦痛が溢れている。

さらにもうひとつは、目に見えない使者の囁き。
それは勧告であり、あるときは警告でもある。
助言であり、励ましであることもある。
私の魂が、世俗から厭世的に離れて久しい。
あるときは息が苦しくなり、体中を不安が駆け巡る。
脈絡のない覚醒が、先鋭化した論争や
不毛な営みを遠ざけてきた。
ひとつひとつの空虚な道標に導かれ、
ある日突然視界が拓ける予感を持ちながら
くる日もくる日も、新たな遺言を胸に刻んでいる。
 
 
 

  • 俳句を一句献上します。
    「救い主すべて引き受け赤星(ほし)の夜」 -- パシリーヌ 2013-12-26 (木) 17:59:16
  • わたしも俳句を作りました。
    「冬の朝ふとんの中で丸くなる」 -- ネコの鈴 2013-12-26 (木) 18:01:19
  • パシリーヌさん

    有難うございます。すべて引き受けていただけるとは、
    とても心強いです。 -- 昼寝ネコ 2013-12-26 (木) 19:35:40
  • ネコの鈴ちゃん

    いい句ですね。それは、まさにわたしのことです。あさ起きるのがとてもつらです。ネコのとくちょうですね。 -- 昼寝ネコ 2013-12-26 (木) 19:36:51

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