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2015.12.23 詩・散文「夕陽の中で」 投稿者:徳沢 愛子

施設のベッドに母が座っている
百一歳と七十五歳は肩寄せ
夕陽を浴びている
窓いっぱい流れ込む夕陽
母は娘に語りかけている
小さな目は夕陽で赤い
赤くなった目で
母はなお娘に語りかけている
夕食前の静かな時間
遠い昔 かいだ花の香りのような
ほんのりしたものが
母と娘を包んでいる
母は娘から目を離さない

たあいない話
今年は大根の育ちがいい とか
曾孫が歩き始めたよ とか
明日も晴れるようだ と
耳の遠い母と
少し大声の娘との会話
テンポは遅くても
言葉は軽やかなピンポン
この一瞬が
ずうっと ずっと続く
そんな錯覚をする静かな夕暮れ
<あしたもまた来てや
嘘をつかんといてね きっとやよ>
母は娘に語りかけている

夕陽は部屋いっぱいに溢れている

  • お母さんの眼に映る夕陽の色、滔々と流れる静かな時間、ほほえましい会話、親はいつまでも親とは言い得て妙ですね。 -- ふわふわの 2015-12-24 (木) 08:16:37
  • 一枚の絵画を見ているような、たおやかな母と娘のツーショットです。静かで平和な暮らしの日常の会話が織りなす二人の固く結ばれている絆。

    この一瞬が
    ずうっと ずっと続く
    そんな錯覚をする静かな夕暮れ

    その先に待つ別離を知っている娘の母への愛おしい思いが、さりげなく伏せられていて胸に迫ります。
    -- 岸野 みさを 2015-12-24 (木) 10:18:01

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