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16121703徳沢 愛子

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2016.12.17 穀粒記者レポート・「クリスマスメッセージ2016―神の魚」投稿者:徳沢 愛子

北海道は八雲を流れる遊楽部川(ユーラップカワ)
ユーラップはアイヌ語で「共に流れる川」
何という良い名であろう
森羅万象すべて
共に仲良く生きよというのだ
この川に その時季になると
鮭の遡上が見られる

鮭は別名「神の魚(カムイ・チェップ)」
アイヌの人々は畏敬をこめて呼ぶ
カナダの西海岸に住む先住民
クワキウトル族は
暮らしの折々にサーモンダンスを踊る
喜びと感謝のダンス
踊る彼らにとっても
鮭はまた「神の魚」
海の栄養を運ぶ鮭
彼らは豊かな川を赤々染め遡上し
森を潤す
熊たちが鮭を森へ運び
その食べ残しがリスや鹿の餌になる
そのまた糞や カスが
森の樹々の栄養になる
何という組織だった命の輪廻
鮭の卵はふるさとの上流で生まれ 旅立つ
三年から六年かけて
オホーツク海 ベーリング海
北太平洋と餌を求めて回遊する
やがて卵を孕んだ雌と共に
雄たちもふるさとに回帰

遊楽部橋から見下ろすと
「神の魚」の軍団が渾身の力で
餌もとらず 休みもとらず遡上してくる
子孫を残すという
神の摂理への従順な協力者
浅瀬で傷だらけになろうと
岩肌で鱗がはがれようと
激流に押し流されようと
今 見事に出産を果たし終えねばならぬ
立派な卵を石の陰に生みつけて
<子孫たちよ 永遠なれ>
と叫ばなければならぬ
身体の小さな雄たちが狙う中
その雄が一瞬 命あれ と
白い執念を素早く卵にふりかける
命懸けた雌雄の協同作業
頭上ではオオワシやオジロワシが
円を描いて 時をはかり鮭を狙う
ふるさとの上流で 白い肌を見せ
岸辺に打ち上げられるまで
火を吹くような生を全うする鮭

冷たい晩秋の風吹く橋の上
老年の心はサーモン色に染まり
「神の魚」の気高さが胸を浸す

  • 徳沢愛子さま
    群れを成して神の律法に従っている様は壮大で圧巻です。それを、映像とはまた異なる作者の確かな目を通して見ることができるのは幸運です。 -- 岸野みさを 2016-12-18 (日) 21:46:06

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