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20051201holynameJC

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2020.12.15 創作短編「空を飛んだサカナの子」投稿者:holynameJC

1.リーブ、はじめてとりを見る 

 ニジマスのリーブは、あそびなかまのガキ大将。子分をいっぱいひきつれて、川のながれをスーイスイ。
きょうもリーブは川のながれにさからって、川上へ、川上へと子分といっしょに大行進。

 さて、リーブがひょっこり水面にかおを出したときのことです。
スーッとあたまをかすめていったものがありました。

「な、なんだ、いまのは!」

 リーブはびっくりぎょうてん。
でも子分はまったく知りません。
「見たこともないやつだ。」
「空の中をおよいでいったぞ。」

 なぜかリーブはイライラ、ドキドキ。
とっても変な気持ちです。

 そこにあらわれたのが、ものしり博士のナマズじいさん。

「おっ、ナマズじいさん。いいところに来てくれたね。」
「なんだ、わんぱく坊主のリーブじゃないか。
 わしに何かようじかな?」

 リーブはさっそく、さきほどのできごとを、ナマズじいさんに話しました。
 するとじいさんがわらっていいました。

「ハッハッハッ、それはトリじゃよ。おそらく、スズメかヒバリじゃろう。」
「トリだって」
「そうじゃとも、トリはな、わしらサカナとはちがって水の中はおよがんで、ほれ、見てみい、あの広くて、まっさおな空を自由きままにとびまわるんじゃ。」

 ナマズじいさんは、ながいヒゲでとおい空をさしながらいいました。

 もちろん、リーブははつみみです。

2.リーブ、空をとぶけいこをする

(空をとべるやつがいたなんて・・・)

 負けずぎらいのリーブはくやしくて、くやしくてたまりません。

「ようし、おれもきっと、トリのように空をとんでみせてやる。」

 その日からリーブは空をとぶ練習をはじめました。
 川ぞこふかくもぐってから、水面めがけて急上昇。
そして水面を尾ビレでバチッとひとたたき。
リーブの体は宙にとび、銀色のウロコがピカッと光ります。

「とんだ、とんだ!」

と、リーブがよろこんだのもつかのま。
すぐに水の中にボチャン。

 何度やっても同じこと。
リーブの体は。水面からほんのちょっぴり浮き上がるだけ。見かねた子分が、

「もうあきらめてほうが・・・」

といっても、負けずぎらいのリーブのこと、まったく耳をかしません。
 川ぞこふかくもぐっては、

シュルシュルシュル、バチッ!
フワッ、ボチャン!
シュルシュルシュル、バチッ!
フワッ、ボチャン!

 そんなことのくりかえしです。

3.ワシのジャック登場

 さて、これを河原で見ていたのが、ずるがしこいワシのジャックです。
リーブにむかって、大声でいいました。

「ニジマス君、いったい何をしているんだね?」

「そういうあんたはだれだい?」

とリーブはたずねました。

「わたしはトリの王様のジャックだよ。」
「えっ、トリの王様だって。それなら、このおれに空のとびかたを教えてくれよ。」
「ほう、君はサカナのくせに、空をとぼうっていうのかね?」

  ジャックはそういうと、心の中でニヤリとわらいました。うまくだまして、リーブを食ってしまおうとおもったのです。

「よし、わかった。教えてやろう。」
「ほんとうかい?」

 何も知らないリーブはおおよろこび。

「ほんとうだとも、さあ、こっちへおいで。」

 ジャックがそういうと、リーブはうれしそうに、岸にむかっておよいでいきました。
そんなリーブを子分たちは心配そうに見つめています。

「空をとぶには、高いところでれんしゅうするのが一番なんだ。
 わたしが空たかく、君をつれていってあげよう。」

 そういうと、ジャックはリーブのせなかをするどいツメでギュッとつかみました。

「い、いたい!」

 あまりのいたさに、リーブは思わずさけびました。
 でも、ジャックはしらん顔です。

「空をとぶためさ。これくらいのことはがまんしなきゃ。」

 ジャックはそういって、リーブをしっかりつかんだまま、大空にまいあがっていきました。
 川はだんだん小さく細くなり、リーブにとってはじめて見る世界が、どこまでもひろがっています。

「わあ、なんてきれいなんだろう。空をとぶって、なんてすてきなことなんだろう。」

 リーブはせなかのいたみもわすれて、おおよろこびです。
ところが・・・

「く、くるしい。ジャックさん、いきができないよ!」

 そうです。
サカナのリーブは空中では、いきがきません。もうくるしくて、死にそうです。

 でも、ジャックはそんなことにおかまいなし。
リーブが死んでから、ゆっくり食べてやろうと思っていたのです。

「くそっ、だましたな!」

4.リーブ、ジャックのツメから脱出する

 リーブはやっと、自分のおろかさに気づきました。
 もう、くるしまぎれに尾ビレをふってバタバタ、バタバタッ。
 そこはガキ大将の力もち、力いっぱい右に左にバタバタ、バタバタッ。
 とうとうジャックのツメからまぬがれて、リーブはヒューッと落ちていきました。
銀のウロコをキラキラ光らせながら、水面めがけてまっしぐら。

ドッボーン! ピチャピチャピチャッ。
 水しぶきをいっぱいはねあげて、リーブは川の中にすいこまれていきました。

 やがて、リーブが気がつくと、まわりには子分たちがいっぱいあつまって、心配そうにリーブの顔をのぞきこんでいます。

「だいじょうぶかい、リーブ?」

 みんなが口々にたずねます。

「うん、もうだいじょうぶさ。」

 リーブはニコリとわらいました。

「空をとんだ気分はどうだった?」

 だれかがききました。

「空から見た世界は、とてもきれいだったよ。
 でも、ちょっぴりくるしかったな。」

 リーブは正直にこたえました。

「じゃあ、もう空をとぶのはやめるのかい?」
「ああ、もうしないよ。やっぱり、サカナは水の中をおよぎまわるのが一番さ。」

 リーブがそういうと、みんながムナビレをたたいて拍手しました。
 リーブの顔も、思わずニッコリ。
きょうの川の水は、とりわけおいしい気がします。

 青い空がひろがっています。トリたちは気持ちよさそうに、風にのってヒーラヒラ。
 でもリーブたちは、そんなものには目もくれず、川のながれにスーイスイ。

 さあ、きょうもリーブとその仲間たちの大行進のはじまりです。

             ----おわり----

  • サカナ君の愉快で危険な冒険、楽しく拝読しました。子供たちが喜ぶストーリーです。
    一年間ご投稿ありがとうございました。 -- 岸野 みさを 2020-12-21 (月) 14:15:40

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